気候変動対策と国際協力

 国際協力業界で働く人のなかで以下の質問をされたことがある人は多いのではないでしょうか。

「日本も大変なのに、どうして他の国に援助しなくてはならないのか」

 World Risk Index 2016[1]によると、日本における自然災害発生リスクは世界で四番目の高さとなっています。地震・台風・洪水等、近年各地で大きな被害が出ており、「日本も大変」という状態が毎年のように起きていることも事実です。

 援助と言っても様々な分野があり、上記の質問に対し、「国際協力」一括りにして答えることも、特定の分野において答えることも可能だと考えられます。

 今回はこの答えを気候変動の観点から考えたいと思います。

 気候変動への国際的枠組みであるパリ協定では、先進国の義務として開発途上国への資金提供や技術協力が書かれています。原文では、先進国からの資金・技術支援に関して”Shall”が使われており、それが努力目標や推奨事項ではなく、「義務」であることがわかります。つまり、日本がパリ協定に批准している限り、先進国である日本にとって気候変動分野における国際協力は義務なのです。

 とはいえ、国際協力業界とはあまり縁のない方々から(気候変動分野において)冒頭の質問をされた場合に

 「気候変動の分野において、日本を含む先進国が途上国を支援することは国際条約においては義務だからです」

という回答では、個人的には少々足りない気がします。

 なお、パリ協定は先進国のみが排出削減義務を追っていた京都議定書とは異なり、全ての締結国に目標値の提出を求めています。また、(気候変動対策に資する資金メカニズムへの)資金拠出についても、先進国のみならず途上国からの努力も求められていることが特徴です。

 共通だが際ある責任として、「先進国」と、「途上国」を二分化していた気候変動枠組み条約から30年弱が経ち、パリ協定は全ての国の参加を必要とし、公平かつ実効的な枠組みとなった、とされています。

 ではなぜ、日本が他国(途上国)に支援をしなくてはいけないのか。相手の専門性によっては、クレジットの移転・市場メカニズム等の活用による日本の排出削減目標達成への貢献など、専門的な説明も回答の一つとなり得ると思います。また、グローバル社会の一員としての責任、日本の技術を他国に広める為、政治的な理由等も回答の一つとなり得るでしょう。

 気候変動は開発・経済成長と直接的かつ間接的にリンクする分野であり、また解決策や将来予測等々についても数多くの研究・議論がなされている分野ですので確立した一つの正解があるわけではありません。

 「なぜ日本が(気候変動分野で)国際協力をしなくてはいけないのか」という質問に対する唯一の正解もないわけですが、上記にあげたこと以外にも、国際協力に情熱を持って取り組んでいる一人一人の数だけ正解はあるのではないか、とも思うことが多いです。その想いが集まることで、個人だけでも、一つの国だけでも対処はできない、地球規模課題である気候変動に対して講じられる対策がより促進されるのではないかと、個人的には考えます。

 なお、トランプ大統領は米国のパリ協定脱退を表明していますが脱退はその国が協定に対して効力を生じた日から3年を経過した後以降、通告により可能となっています。米国がパリ協定から脱退可能となるのは2020年11月4日、大統領選挙の翌日となっています。さて、どうなることやら。


執筆:豊嶋 絵美


脚注:
1. https://collections.unu.edu/eserv/UNU:5763/WorldRiskReport2016_small_meta.pdf

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